ドルの行方 2017 2 19

 ドルを取り巻く環境は、
10年以上前のブッシュ政権の時とは大きく違います。
 あの時は、有力で魅力的な通貨であるユーロが登場したので、
ドルは、ある意味で、危機的な状況にありました。
 たとえば、世界的に有名なモデルは、
報酬をドルではなく、ユーロにしてほしいと言っていたぐらいです。
 だからこそ、アメリカの財務長官は、
「ドル高は、アメリカの利益である」と主張する必要があったのです。
 しかし、その後、ユーロ圏においては、
ギリシャ危機に始まって、イタリア危機、スペイン危機と、
次から次へと金融危機が起こり、
挙句の果てには、ドイツ銀行危機までありました。
 こうなると、ユーロに対する信認は希薄なものとなり、
ドル1強の時代となりました。
 つまり、財務長官が
「ドル高は、アメリカの利益である」と主張しなくても、
自然とドル高になっていくでしょう。
 さて、アメリカにとって、ドル高がよいのか、
ドル安がよいのか。
 単純に貿易収支を改善させたいならば、
ドル安の方がよいでしょう。
 しかしながら、安全保障や財政の面まで考えると、
ドル高が望ましいのです。
 たとえ話としては不適切かもしれませんが、
ドルは、核兵器よりも強力な兵器になり得るのです。
 多くの人は、軍事力で覇権を確立すると考えるでしょうが、
実は、通貨で金融的な覇権を確立する方が、もっと強力です。
 また、世界中から資金をアメリカに集めて、
アメリカ国内で大事業を行うには、金利高・ドル高が好ましいのです。

銀行と噂 2016 10 2

 欧州のドイツ銀行をめぐって、
いろいろな情報が飛び交っています。

書名 世界同時超暴落
著者 伊東 秀廣  フォレスト出版

「ドイツ銀行のデリバティブ保有は、ドイツGDP19倍の75兆ドル」
 そもそも、「ドイツGDP19倍」という数字の大きさは、見当がつきません。
さらに、「75兆ドル」も日本円に換算すると「驚き」です。
思わず、「本当か」とつぶやいてしまいました。
 しかしながら、欧米の銀行では、
デリバティブ取引が活発に行われていたという話を聞いたことがあります。
 多くの人は、堅実であるはずの銀行が、
なぜ、そのような取引をするのかと思ったでしょうが、
最近の銀行は、昔と違って、堅実ではなく「成果主義」になっていたからです。
それも、短期間の成果を求める傾向にありました。
 そうなると、つい危ない橋を渡りたくなるのが、人間の習性です。
手間暇がかかって地味な仕事である融資事業で稼ぐのは、ばからしくなります。
 金融市場には、「ハイリスク・ハイリターン」の商品が、あふれていますが、
短期間の成果を求めるとなると、
つい「ハイリスク」という文字が見えなくなってしまうのです。
 いや、宣伝文句は、「ローリスク・ハイリターン」になっていたかもしれません。
金融工学の発達によって、「ハイリスク」の問題は解消された。
つまり、「ハイリターン」のみになった。
あるいは、金融工学の高度な発達によって、ハイリスク商品が誘発するリスクの部分は低減された。
しかも、格付け会社から高い格付けを得ている。
 このような宣伝が、サブプライム危機へ向かう、
いや、あの当時は、「サブプライム景気」と言いましたが、
そういう宣伝が多かったと思います。
 私は、2008年9月21日に、
「The Trillion Dollar Meltdown by Charles R. Morris」という本を紹介しました。
 この本によれば、2008年当時、
「金融資産の総額が、世界GDPの4倍を超え、
金融派生商品の総額が、世界GDPの10倍を超えている」というのです。
 この時は、超バブル(スーパー・バブル)の崩壊があり得ると書きました。
つまり、デリバティブ・バブルの崩壊のことです。
(参考)
 「The Trillion Dollar Meltdown」という本は、
日本経済新聞社から日本語版が出版されています。






























































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